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5 もし私が絵かきだったら、100年残るような大作になるはずだったのに!! [story [物語のスペース]]

世紀の映像ショーみたいな感じで、その、プロジェクション

マッピングが始まった。

プロジェクションマッピングのその光景は、幻想的はあるが、

まるで宇宙の遥か彼方へ人間の魂を運ぶための儀式のように

感じられる、実際にその光景を目にするとそう思える。

人は、暗闇と光から太古の記憶を遡るようにそんなことを

思い出すのだろう。

その東京駅の駅舎からは、今にも漆黒の夜空に向けて宇宙船のようなものが

飛び出すようで、昔にアニメでみた、宇宙ステーションとか、

そんなかんじに見えた。

その、光景を眺めているうちに、幼い頃に父と、母で、東京駅から

どこかへ向かうのに特急の電車に乗った時の記憶が蘇ってきた。

鮮明にその不確かな幼い頃の記憶が。

父と母の若かりし頃のイメージが頭の中をめぐって、もう何年も

涙なんか流したこともなかったのに、突如涙がボロボロとこぼれ落ちた。

まだ、何ひとつ私の人生から失われていない頃の記憶。

そして、それは二度と戻ってはこないもの。

その場に立ちすくんだ私は、その映像ショーを呆然と眺めながら、

自分自身という存在に何一つ残されていなくて、その、光の立体映像に

自分が溶け込んで、体ごと消えてなくなってしまうのではないかという

錯覚を起こした。そして、その瞬間、体中の力が抜けてしまうの

ではないかという感覚に襲われて、あわてて頭を振って、

体の力を振り絞った。

少し、疲れているのだろう。

だが、それは、疲れではなく、BGMを聞いているうちに私自身が抱える

喪失感なのだということを、突如強く感じたのだった。

今から何かを作り出すには、もうそれほど長い時間は残されていないように

感じられて、人生の敗北者になってしまったように体の細胞が力

を失ってしまっていた。

私の魂はまるで、水面の枯葉のように生という世界の中で力を失って漂って

いるだけになっていた。

私の目の前を、幼い女の子が迷子になったのか、あたりをキョロキョロしながら、

誰かを探して歩いていた。私が声をかけようとした瞬間、母親らしき女性が

その子をすっと、優しい眼差しで抱きかかえた。

ショーは、暗闇の中、宇宙を映し出す望遠鏡の像のようにくっきりと

光を映し出している。

そうそれは、幼い頃に図鑑で見た、バラ星雲や馬頭星雲の幻想的な

像のようで、次から次へと、天地創造のようなまばゆい光を放っていた。

                                     ~  end ~

著作権はブログ作成者にあります。この物語はフィクションです          [コピーライト]すぴか

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