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たんちゃんのゆきぐも  1 [story [物語のスペース]]

 

「たんちゃんのゆきぐも」

 

ぼくたちのこどものこどもが生まれるくらい未来の話。

 その大きな家はまちのはずれにあって、赤い屋根の大きな家で、

 遠くからでもとてもよく目立つ。

 庭には白い中型犬がいて犬小屋があった。

 そうくんは足早に学校から帰ってくると、犬小屋のことなんか気

 

 にもとめず、一目散に玄関をあけて家へと入った。

 その日はまだ冬の厳しい寒さが訪れる直前で、けれども雲はいつ雪

 が落ちてきてもおかしくないほどに厚くたれこ

 めていた。

 最近では人工知能をもったロボットが一台

 くらい家にいるのが当たり前で、ペットがわりにそれらを飼っている

 家庭も多い。

 ロボットは餌代がかからないことがとても人気になっている理由で、

 故障することもあるのだが、みんなとても大事にロボットを扱っていた。

 

 そうくんは、三年生になったお祝いに、はじめてのペットロボットを買っ

 てもらった。

 それはとても金額の高いもので、おもちゃやで購入してもらったのだ。

 そのロボットにはSP100という製品名

 があるのだけれど、そうくんはそれとは別にたんちゃんという名前をつけた。

 からだはメタリックシルバーで、かわいい

 足が二本ついている。前後に足を動かすと、するすると動きだす。ほんとう

 に歩いているみたいだけど、関節はないので足はただ前後に交互にうごくだけ

 実際にはキャタピラみたいなものがついているので

 そんなに早くはないけれど、動きはスムーズそのものだ。

 腕は、マジックハンドのような形状になっていて結構自由自在にうごかせる。

 からだには、真ん中あたりに緑色の星マークがぐるっと一周、合計5か所に

 デザインされていて、人間でいう、心臓のあたりには赤と黄色のランプがつ

 いている。

 赤いランプは不機嫌のサイン、赤の点滅は怒っているサインだ。

 黄色はご機嫌な時にピカピカと点滅する。感情センサーの働きで、そういう反応をす

 るという優れものだ。

 感情センサーは、言葉の種類ではなく、人の声の調子によって、声をかけた人の感情を

 判別するという、とても高度な技術を応用したものだ。

 胴体の上にまたボールのような形の頭がチョコンとついていて、軽くぐらぐらと動いた

 りする。

 目の位置には、特殊なレンズがゴーグルをつけているかのようにセットされており、

 画像で人間を識別する。200人分の記憶ができる。

 言葉を話すこともでき、ごきげんサインの黄色ランプのときは、あいさつや会話を

 することもできる。

 

 

 

 たんちゃんのすごいところは外国語をはなしたりできることだ。たんちゃんは、

 その日の気分でなのか、そうくんが行ったことのない国の言葉で話しかけてく

 ることもあって、そうくんは、外国語で話しかけられると毎回びっくりしていた。

 でもしょせんはロボットなので、そうくんが言っている言葉が理解できないときな

 どは、理解不能に陥ったたんちゃんは不機嫌にくるくるとまわりだすのだ。

 

こういう種類のロボットは、ずいぶん昔からあったのだけれど、そうくんには、

たんちゃんについている感情センサーというものがどういうものなのかよくわから

なかった。

 ただ、人間の病気などをなおすために体に機械を埋め込んだり、コンピューターの

 最新技術のなかに人工知能というものがあって、人間の脳細胞をまねてコンピュー

 ターのなかで電気信号を増殖させていって、それを応用して、判断したり、情報処

 理したりするという技術があることも有名なことだ。それは、そうくんも、何度も

 テレビでみたことがあった。

 だけれど、このたんちゃんのように人間の感情と同じ反応をするなんて、どんなセ

 ンサーなんだろう、とそうくんは疑問にかんじていた。

ところが、そうくんの疑問はどこ吹く風でたんちゃんはちゃくちゃくと、言葉を

判別していろんな反応を覚えていく。

 そして、たんちゃん自体は、ペットのような感じで日に日に家になじんでいった。

 そして、いろんな反応をするたんちゃんはロボットとはおもえないくらいにとても

 愛らしくすぐに家族の人気者になったのだ。

 

 そうくんの部屋には、たんちゃんがやってきた日以来、ある一枚の紙切れが貼って

 あった。それは、たんちゃんを購入した時にたんちゃんが梱包されていた箱の中に

 説明書と同じ紙に印刷されていて、そこには、アイザックアシモフのロボットの三

 原則が引用されて書いてあった。

 

 

時間がたつのは早いものでこのロボットを購入した日からもう一か月ほど経っていた。

 家で飼っている白犬のぶーちゃんは、ロボットのたんちゃんをみかけるといつも猛然と

 吠え出す。ぶーちゃんに吠えられると、たんちゃんは赤いランプを点滅させて、しばら

 くすると、音が聞こえるのと反対向きに逃げ出した。

 たんちゃんは主人であるそうくんの名前はいえるようになっていた。そうくんの

 名前を呼ぶときは、黄色いランプはご機嫌を示す点滅だ。

 たんちゃんはあまり外にはでられない。雨にぬれたり、水がかかったりすると、

 故障することがあるからだ。

 なかなか外に出られないたんちゃんは、いつも学校からそうくんが帰ってくるの

 を玄関のあたりで待っていた。

 そしてそうくんが出かけるときはやはり玄関までキャタピラを動かして見送りに

 出てくる。

 

 たんちゃんが家にきてからというもの、そうくんは学校が終わると友達と遊ぶ

 約束もしないで、目散に家に帰ってきてたんちゃん

 とあそぶ。それに飽きると、ぶーちゃんを連れてたんちゃんとじゃれて遊んだ。

 その日はたんちゃんに飾り付けをすることにした。

 たんちゃんは、ゆきだるまみたいな雰囲気があるので、さっそくバケツのよ

 うな形をした箱に青い絵の具で色をぬり、たんちゃんの帽子をつくった。

 それをかぶせて

 「できたよ」

 と声をかけると、たんちゃんは黄色ランプを点滅させて、嬉しそうにした。

 つぎにそうくんは、昔おかあさんにつくってもらった緑色のマフラーをもっ

 てきて、たんちゃんの首のところにネクタイのようにまきつけた。

 「どう?」

 そうくんの声にまた、黄色ランプを点滅させてとてもご機嫌そうだ。

 緑色のマフラーと緑色の星形マークがとてもよく似合っている。

すっかり雪だるまのように変身したたんちゃんは、とてもかわいらしくなった。

ぶーちゃんのところまでたんちゃんをつれていって、雪だるま風ロボットらしく

外で遊ぶことにした。

そうくんの家の庭を遠目に眺めたら、雪だるまが庭で遊んでいるように見えただろう。

手のかわりのほうきはささっていないけど

 色といい、形といい、飾りといいどこからどうみても雪だるまと犬がじゃれている

 ようにみえるはずだ。

 キャタピラの足で庭をぐるぐるまわりながらぶーちゃんとそうくんとたんちゃんは、

 日が落ちて暗くなるまでいつまでもあそんでいた。庭のきんもくせいはもうほとん

 ど花が落ちてしまい、オレンジの小さな花があちこちに散乱していた。

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